岩手県交通 岩手22き1260/合石

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KC-LR333F/I-BUS/10-1
大迫バスターミナルに所属していたF尺の青銀LRです。

県交通の自社発注LR(ジャーニーK)としては最終世代に当たり、黒色のラバーフェンダーはこの年式のみの特徴です。また、本車は出入口標記など側面標記の仕様が同年式の他車とはやや異なっており、何らかのタイミングで大規模な補修が行われたものとみられます。

長らく旧大迫町内のローカル路線を主体に使用され、 岩手22き・912と共に大迫バスターミナルで最後まで残った青銀カラーのバスとなりました。同所の閉所後は僚車の岩手200か・923と共に釜石に転属しています。

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合石にて 大迫ローカルといえばこれ!というべきシンプルな幕と青銀カラーのコンビネーション。同時期の青銀LRでは基本的にサボとなっている出入口標記ですが、本車ではサボ受けもろとも撤去されています。

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大迫バスターミナルにて 補助灯具もなくシンプルなリア。F尺LRの間延びしないサイズ感も魅力的です。踏切直前一旦停止の啓発ステッカーに「らしさ」を感じるのは私だけでしょうか。

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合石にて 緑地に黒線が入るモケットは同時期の県交通LRとして標準的な仕様。優先席にかけられた白い枕カバーがアクセントです。

 

乗車記

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大迫バスターミナルにて 入口から覗くと青銀LRが合石幕でお昼寝中。

閉所まで一ヶ月と少しを残すばかりとなった昨年11月下旬の土曜日、最後にもう一度...と大迫を訪れました。早朝まで降った雪がうっすら屋根に残る朝の大迫バスターミナルに降り立つと、青銀LRの1260号車が「大迫⇔合石」表示で佇んでいました。どうやら旭の又線で青銀LRに乗るという目的は達成できそうで一安心。昼過ぎの発車時刻までは向山展望台に登ったり、許可を頂いて構内の資料を撮影したりして過ごしました。

初冬の弱い光線が早くも傾き始める12時過ぎ、運転士さんが乗り込んでエンジンがかかり、1260号車が午睡から覚めて動き出します。洗車を終えて乗り場に佇む姿もあとわずか、そんなことを思いながらシャッターを切りました。

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大迫バスターミナルにて 定番アングルで1枚。静かな宿場町、風情のあるターミナルに青銀LR、そんな素敵な風景も過去帳入りしてしまいました。

 花巻からのバスが到着し、大迫・石鳥谷線の回送が慌ただしく出ていくと旭の又線・竪沢線の発車時刻。ジリリリリと鳴る発車ベルにホーンで応え、同時発車の竪沢行き(この日は951号車でした)を従えて大迫バスターミナルを後にします。青銀LRと国際LVという「ザ・県交通」な組み合わせで大迫の中心部を抜け、下中居で左折して竪沢行きと別れます。国道を離れると道幅は狭まり、合石までセンターラインのない道が続きます。諏訪前を過ぎると人家もまばらとなり、旭の又川に沿ってひたすらエンジンを唸らせつつ進みます。諏訪前から先は終点までフリー区間となっており、過去の訪問時にも停留所ではなく自宅の前でバスを降りていく利用客の姿が見られました。

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上旭の又付近にて 旭の又線はその名の通り旭の又川の谷筋を丹念に辿っていました。いかにも岩手の農村部らしいギャンブレル屋根の建物もいい雰囲気です。(復路撮影)

 高洞、上高洞、寺地と人家のある場所には比較的こまめに配置されたバス停を通過し、学校跡を横目に沿線では比較的規模の大きい旭の又地区を越えると、まもなく終点の合石です。「本来の」合石でこの便唯一の利用客が下車し、そこからもう一息登ると合石の転回所。バックで転回所に入り、数分後には大迫バスターミナルに向けて折り返します。

 

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合石にて エンジンが止まれば聞こえるのは風の音と木々のざわめき。山の方から風に乗って流れてきた雪がひらひらと舞っていました。

 

 

 

くたびれた青銀LR、風情あるターミナル、表情豊かな沿線風景 -何をとっても魅力に溢れていた大迫ローカル各線は周知の通り2018年末をもって廃止となりました。

 

 【2018年11月訪問】