濃飛バス 飛騨230あ3216/上之田

2KG-LR290J4/J-BUS/2020 05

下呂営業所に所属する新型エルガ三オです。

ふそう車のイメージが強い同社ですが、中型路線車を国産新車で導入するとなると必然的にLR/KRとなる状況ではやむなしということなのか、ここ最近はエルガ三オの導入が続いています。2019年に3111、2020年に3212~3216、2021年に371~375と既に計11台が導入されており、管内を乗り歩いているとそれなりに遭遇します。

 車内は郊外型のシートレイアウトを採用していますが、座席はメーカー標準の樹脂製のものではなく金属製のものが採用され、きちんと枕カバーも付いています。窓は同社らしい濃いめのスモークで、カーテンはありません。どんなクルマに塗っても格好良くなってしまう濃飛カラーですから、新型エルガ三オでもご多分に漏れずキリッと仕上がっています。

 本車は下呂所属ですが、萩原車庫を拠点に運行されるげろバス萩原で使用されることが多いようです。

上之田にて 濃飛バスは前乗り前降りで、前中引戸でも中扉は基本的に使用しません。白地に緑のスッキリしたカラーリングは、今時の新車との相性が良い気がします。

上之田にて U-LR以来脈々と受け継がれる?凸の字を上下反転したような側面後部のグリル形状。いすゞ中型といえばこれですよね。

上之田にて シートレイアウトは郊外型。メーカー標準の樹脂製シートではなく、従来からの金属製のシートが採用されています。

 

乗車記

萩原駅前にて まさに"駅前バス車庫"といった様相の「萩原町バスステーション」

 暮れも押し迫った12月の下旬、夕闇迫る飛騨萩原では、山の方から風に運ばれた雪がはらはらと舞っていました。同じ列車から降りた下校の生徒達はすぐに散り、人気の絶えたロータリーには冷たい風が吹くばかり。朝からの付き合いですっかりくたびれてしまったカイロを揉みながら、お目当てのバスを待ちました。

萩原駅前にて 小雪舞う駅前で僅かな乗客を待つローカルバス。こういうシーンが見たくて、つい色々な場所に足を運んでしまいます。

 発車の5分前になると、車庫の前で「上之田(山之口)」と表示していたエルガ三オが乗り場へとやってきました。たとえそれが最新のノンステップ車であっても、LRがローカルな行先を出して現れる姿にはやはり心が躍ります。

 結局私のほかに片手に満たない程度の学生が乗車し、発車時刻に。駅前通りを少し下ると国道に出る前に右へ折れ、Aコープと農協支店を横に見て旧萩原町の中心部を抜けていきます。星雲会館前の先で国道を越えて飛騨川を渡ると、右岸側の県道を北上します。萩原周辺では、濃飛バスの高山~下呂線が飛騨川左岸の国道を走るのに対し、げろバスは基本的に右岸側の県道を走ります。

星雲会館前付近にて 暮色に包まれる飛騨川を渡ります。色付きガラスで余計暗く見えることもあり、うら寂しい印象が一層強まります。

 センターラインもすぐに消えて1.5車線の"ザ・田舎の県道"となった道を、4HK1のうなりも高らかにバスはぐんぐん進んでいきます。途中の橋場では、コミュニティのバス停ポールのほかに、軒先に吊された「のりば」看板が残っていました。良い雰囲気でしたが、急に降りるわけにもいかず無念のスルー......

橋場を過ぎたあたりから家並みが途切れがちになり、四美辻を越えると山之口への登りに差し掛かります。山間に分け入るとともに雪の勢いも強まり、路面も徐々に白く染まっていきました。

森下口付近にて 山之口では川沿いのバイパスを通らずに山際の旧道へ入ります。

 2車線の県道をしばらく走ると、森下口の手前で右に折れて旧道へ。ここから山之口公民館前までが、げろバス川西北線随一の狭隘区間です。このあたりまで来ると、車内は貸切状態になってしまいました。

 山之口公民館前で一旦県道に合流してすぐに左へ折れると、まもなく終点の上之田です。山之口川に架かる橋にお尻を突っ込んで転回すると、橋の袂で発車まで待機します。

上之田にて 実はこの終点は着発となる便が多いのですが、冬場は飛び出し区間に入らないぶん折返し時間が長くなるケースが存在します。

雪降る山間の集落は水墨画の世界。

 冬の薄明かりは瞬く間に消え、折り返しのバスが発車する頃には辺り一面真っ暗に。帰りは北中前バス停から徒歩で対岸の上呂駅へ向かい、高山本線普通列車で高山まで出ました。

 

 余談ですが、橋場バス停のすぐ横にはその名の通り歩行者用の吊り橋が架かっており、渡った先には高山~下呂線の上呂橋場バス停があります。右岸側の橋場バス停→左岸側の(上呂)橋場バス停という素敵な乗り継ぎができるスポットですので、興味のある方はぜひ試してみてください。

 

【2021年12月訪問】