岩手県交通 川重ハイデッカーⅤ(K-CSA650)を作る

いすゞの縦目、川重ハイデッカーⅤを作ってみました。

 

 ゼロ年代の県交通と言えば、青銀のモノコックと並んで欠かせないのが国際貸切カラーを纏ったロマンス車と言えましょう。V10SSのバッジを掲げて長距離路線を駆ける川重ハイデッカーは、BUやC系と並ぶ憧れの存在です。

 

 いつかは作ってみたいと思っていた県交通の川重ハイデッカーですが、バスコレ改造でモノにしようとすると一筋縄では行きません。前面の明かり取り窓周りに苦戦しそうなⅠ型、傾斜したフロントガラスの印象把握が厄介そうなⅡ型、曲面ガラスに手を焼くことが確実なⅣ型......

いっそ73SCで妥協しようかとも思いましたが、やはりハイデッカーが欲しいという気持ちは譲れず、最終的に川重ハイデッカー初挑戦はⅤ型に落ち着きました。(もちろん73SCも格好いいので、いつか作りたいと思っています)

 

 

 そんなこんなで、半年ほどああでもなこうでもないと脳内審議を繰り返した結果、ハイデッカーⅤの素材として用意されたのがこちらの5台+αです。

最終的には、前扉の供出元として北村CJM、窓パーツの部品取りとして三重交通のガーラをさらに潰しています...

 縦目のベゼルをエルガから持ってくるというのは早い段階で決まっていたのですが、やはり鍵は窓パーツ。結局、側面窓は前扉直後のRが決め手となり17弾のガーラ、前面窓は天地寸法からほぼ選択の余地なく17弾のRUとなりました。その他の部分はCDケースから切り出しています。

 

 素材が揃ったら、さっそく切り刻んでいきます。今回は前面が大工事なので、切継ぎメニューが単純で精度を出しやすいリアを基準にすることにしました。まずは5弾BUのリアを2台ぶん使い、窓天地が大きいリアを作ります。この段階で川重ハイデッカーらしいシルエットが現れて結構テンションが上がります(笑)。リアの断面が決まったら、屋根、側面窓周り、フェンダー周り(腰板)の順に継いでいきます。継ぎ目はプラモデル用の接着剤で接着したあと、隙間埋めと補強を兼ねてさらさらタイプの瞬着を流していきます。

この段階で"それらしい"シルエットが見えると嬉しくなりますね。

フェンダー部はプラ板で成形しました。最後に断面にt0.1プラ板を貼って凸表現を復元します。

 リア→側面の順に各部を接着してゆき、最後に前面まわりです。前扉は15弾北村CJMのものを切り出し、前側に傾斜を付けて接着しました。今回はCSAなので窓隅に大きめのRが付いているCJMの前扉を使いましたが、LVの折戸車では窓隅がもうすこし角張ったものが使用されているようです。前面窓下はガーラのものを使い、凸ディテールを切除したうえで凹部を瞬着で埋めました。

 余談ですが、いすゞ車を作る時にはできるだけいすゞ車を素材として使うようにしています。ほとんど気分の問題なので理詰めで理由を説明しろと言われても困ってしまうのですが、ちょっとしたRの付き方など、経験的に他メーカーの車種を使うとどうしても違和感が大きくなるような気がしています。

のっぺらぼうの車体。ディテール再建前に荒番手のペーパーで車体をきちんと滑らかにします。

前面窓後ろのピラーはプラ板を使用しました。

 大まかにボデーのシルエットが見え、表面処理が片付いたところでディテールを追加していきます。ゴリゴリのバスコレ改造で一番楽しい工程ですが、ここで印象が決まってしまうので、やはり実車写真とのにらめっこが欠かせません。まずはハイデッカーⅤのトレードマークとも言うべき前面バンパーまわり。前述の通りライトベゼルはエルガから調達し、その他の部分はt0.1、t0.3のプラ板を組み合わせてでっち上げます。ライト間のガーニッシュはPカッターで模様を彫りました。また、RUの前面窓は天地寸法が気持ち足りなかったため、窓パーツ側のHゴム黒印刷を落としてボデー側にHゴム表現を追加することで高さがあるように見せるセコい方法を採っています()

まずはバンパー上縁→ライトベゼル

最終的にはこんな感じ。ちょっとした隙間は瞬着で埋めます。

 側面はPカッターでパネルラインを彫りなおした後、グリルやトランクの取っ手も追加します。グリルはいつものようにピンバイスとヤスリで開口した後にプラ板をはめ込み凹表現しました。トランク取っ手はピンバイスで開孔後に下半分を埋めて半月状の開口部を作り、グリルと同じ方法で凹表現としたあとt0.1プラ板でノブを再現しました。

トランクの取っ手を作ろう!

 リアバンパー、雨樋、ガーニッシュ、側面モールなどもプラ板で再現し、テールランプ(12弾RV)やバックランプ(15弾CJM)、マーカーランプ(11弾キュービック前期型)もドナー車からカッターでそぎ取って移設します。非常口取っ手はストライプの塗り分けにかかていたため、塗装後にトレジャータウンのエッチングパーツ(バス用パーツ集#9収録)を接着しました。

サフ吹き直前の姿。ここまで来ればゴールはあと少し(?)

 サフを吹いたら数ヶ月放置して、印象把握や継ぎ目処理に違和感が無いか見直します。生地完成直後はあまり冷静に見られないのですが、しばらく置くと、気持ちが落ち着いてくるうえに手戻りに対する抵抗感が薄れるので、ここ修正するか~という箇所が結構出てきます(苦笑)。

 

 生地完成まで来ればあとは塗装だけ!なのですが、相手はストライプの練習用かと思わずにはいられない国際貸切カラーなので、これまた心のハードルが…今回は白(Mr.カラー#GX1クールホワイト)→青(GM#16青20号+Mr.カラー#110キャラクターブルー)の順にエアブラシで塗装しました。マスキングは至って普通の黄色いクレープ紙のものをひたすら貼り込みました。帯幅は中央高速バスBの山梨交通ガーラを参考に。屋根上は実車写真のベンチレータの色を参考にしたりしましたが、割とデタラメです(汗)

修行のようなマスキング…頑張って直線を出します。

めくりの儀。今回は修正吹き2回+筆タッチアップ多数でした。前扉裾が白いんですね…

 メイン塗装が済んだら色差しとレタリングです。バンパー、ガーニッシュ、テールランプ、雨樋、窓下モールは光沢黒(クレオス#2ブラック)を塗ってから銀(GM#39アルミシルバー)を吹きました。GMのアルミシルバーは名前のある特色系ではありませんが、粒子が細かくてお気に入りです。その他の部分はいつも通り必要に応じてマスキングしつつ面相筆で塗り塗りしました。側面と屋根肩に入る赤ストライプは当初デカール表現を考えていたのですが、サイズ合わせが面倒になり結局筆塗りです。

 前面社紋や側面社名はいつものように自作デカール(ハイキューのインクジェット用)を作成。ナンバープレートとV10SSエンブレムは写真用紙(光沢)に印刷してから台紙を削ぎ切って車体に貼り付けました。国鉄5Bの動輪マーク等と同じく、フチに断面色を塗ることで台紙の白を目立たなくしています。車体への接着には木工用ボンドを使用しました。前扉横のサボは、トレジャータウンのサボ受けを切らしていたためt0.1プラ板を切り出してリムを銀に塗って貼り付けてお茶を濁しました。

本作のキモとも言えるV10SSエンブレム。縦横で複数印刷した中から比較的綺麗なものを選んでいます。

 内装パーツは基本的にサフのグレーとし、枕カバーは白、化粧板はあずき色(いずれも水性ホビーカラー)で塗り分けました。インパネは15弾CJMのものに交換しています。ボデーは最後にクリアー(Mr.カラー#GX112スーパークリアーⅢ+ガイア#006フラットベース)を吹き、いつものようにタミヤエナメルでウェザリング兼墨入れを施しました。塗膜でキツくなったはめ合いに車体を割らないかビビりつつ、窓をはめれば完成です。

 

-完成-

 以前から作りたいと思っていたハイデッカーⅤでしたが、何とかモノにすることができました。やっぱり格好いいですね。こんなクルマで岩手県内を乗り歩きたい人生でした…バスセンターで待ってたら来ませんかね……

 

 

 青銀LRからスタートして5年弱作り続けてきたバスコレ県交通シリーズですが、学生のうちに完成させられるのは本作が最後になりそうです。RM MODELS(そしてスーパーリアル鉄道情景)に掲載していただいたり、県交通のことを知った頃に眺めていたサイトの管理人さんに見てもらったり、思えば随分遠くへ来たなぁという思いが強い今日この頃。まだまだ作りたいお題は沢山ありますので、もうしばらくお付き合いいただければと思います。

 

 最後になりますが、今回ハイデッカーⅤの制作中に、Twitter上で鮎もなか様から「ハイデッカーⅤ支援」ということで県交通のハイデッカーⅤの写真を多数ポストしていただきました。当時のネット環境等でどうしても圧縮されている画像も多く、細部が確認できる資料は大変助けになりました。この場を借りて改めてお礼申し上げます。

 

【2022年12月完成】