U-LR332F/IK COACH/7-7
豊玉営業所に所属する自社発注のLRです。
観光マスクのF尺トップドアという個性的なスタイルで、乗合登録ではあるものの使用路線が固定されているためか行先表示は前面の固定サボのみ、運賃は三角表で掲示と割り切った仕様となっています。車内には補助席・枕カバー付の固定ハイバックシートが並び、同時期に導入された他の路線車よりもやや高級な内装となっています。
所属は豊玉のようですが、実際には青海に駐在して専ら青海線で使用されています。
乗車記
片道16分、平日2往復の運行ながら専属の中型車を使用し、しかもその専属車が終点に駐在する路線が存在するらしいと知ったのは、No.108をきっかけに対馬交通について調べていたときでした。ネットで検索しても乗車記は見つからず、アップされていた写真も片手で数える程度。これは乗ってみるしかない!と行程に組み込んだのは言うまでもありません。
当日は厳原を始発の縦貫線で出発し、韓国からの観光客に混じって三根へ向かいました。三根で2時間弱をつぶして10時20分、ようやく青海行の発車時刻です。三根を出たバスはまず国道を南に向かい、一つ目の三根大橋で縦貫線と別れて独自区間に入ります。すぐにセンターラインは消え、穏やかな三根湾の海岸線をなぞるように曲がりくねった県道を進んでいきます。
三根湾に沿ってしばらく走ると、狩尾バス停の先で進路を変えて小さな半島の尾根を越える峠越えに入ります。木々の影が落ちる小径を登り詰めた先に待つ木坂隧道を抜けて、ささやかな谷筋を下るとそこが木坂集落です。
木坂集落を抜けると、バスは再び海岸線に躍り出ます。先ほどの穏やかな三根湾と違い、こちらは韓国との間を隔てる朝鮮海峡。海の色も心なしか深さを増し、海岸も荒々しい表情に見えました。
神社前を過ぎると、バスは真新しげな青海トンネルへ。トンネルを抜ければそこが終点青海です。県別マップルではつづら折りの旧道を行くように描かれていますが、現在は新道経由に変更されているようです。少し登った先にはバス1台分のスペースと運転士さんの自家用車が見えましたが、そこまでは行かずにバス停前の三叉路で転回して折返しの発車まで待機していました。
海あり山ありの変化に富んだ車窓が展開する青海線ですが、対馬市の資料では民営による定時定路線運行の見直し対象とされており、なんとも浮き世離れした現在の運行形態がいつまで維持されるのかは不透明です。片道16分にローカルバスの「グッとくる」要素が詰め込まれたこの路線、趣味者の戯言であるとは分かっていますが、それでもやはり長く残ってほしいと願わずにはいられません。
【2018年8月訪問】